知り合いの修理屋さんからのご依頼で入庫したBMW116i。
高速道路を走行中に、急に冷却水警告灯が点灯してオーバーヒートしたとか。
パーキングで停車して、修理屋さんが急いで引取り。点検すると、ラジエターのドレンがもげて、冷却水が空の状態になっていたそうです。
引取後にエンジンを回そうとすると、クランキングが重くて始動しにくいとのことでした。
入庫後、リフトアップして各部の点検。
ラジエターのドレン以外は水漏れはなさそうでした。
念のため、エンジンの状態を見ようと水を入れようと。
ラジエターキャップに油分が付着していました。
同上。 サブタンクの口の周りも油分が。
オイルフィラーキャップを開けたら、水とオイルが撹拌されて、ゴマダレ状態に。
フィルターケースを開けるとさらにゴマダレが。
オイルパンのドレンボルトを開けると、やっぱり水が混入したエンジンオイルが出る出る。
まだ出る。
ゴマダレが出る。
マフラーのフランジナットを少し緩めると、マフラーからも水が出る。
触媒は水浸しでした。
エンジンから出た水とマフラーから出た水を合わせると、多分30リットルくらいの水が出てきました。
水を供給しながらエンジンを回し続けて、エンジン内部に満遍なく水が回った状態でした。
早速エンジンを降ろす為に、マフラーやミッション類を取り外します。
エンジンが降ろされた状態
降ろしたエンジン。
ヘッドはゴマダレがたっぷりと付着。
というより、ゴマダレの中にバルブ類が浸された状態。
カムシャフトは異常なし。
バルブには既に錆が発生していました。
クランクは手では回せない状態。
シリンダーに錆が発生し、ピストンリングが錆を噛んだ状態でした。
ピストンのトップを出そうにも、クランクが回らずどうにもならず。
途中経過を修理屋さんに報告し、オーバーホールとエンジン載せ替えで、費用が安く済む方法でとのご指示をいただきました。
探傷スプレーで、ヘッドの亀裂を点検しましたが、水が回るような傷は有りませんでした。
また、ヘッドガスケットも抜けている部分は無いので、オーバーヒートによるヘッドの歪みで、水がまわったものと考えられます。
ピストンを外してクランクを回したところ、ジャリジャリした手応えがあり、メタルも傷が入っているようでした。
ということで、部品代も含めた費用を考えると、オーバーホールではなく中古のエンジンを載せ替える事で話しが進みました。
冷却水のトラブルは、単純にオーバーヒートを起こすだけでは無く、エンジンに決定的なダメージを与える事になります。
定期的な点検が、重大なトラブルを防ぐことにつながります。